自動運転レベル

自動運転のレベルについて

一言で自動運転といってもレベルがあります。

自動運転には、レベル0から5までの6段階が設定されています(SAE J3016:SEP2016)。
そのレベルを制定したのは、アメリカのSAE International(自動車技術者協会:Society of Automotive Engineers)です。
SAEは自動車をはじめとする陸上輸送機器や、航空宇宙機器の分野で適用される規格です。

自動車技術協会(SAE)

www.sae.org

その規格(SAE J3016)を元に日本語に翻訳した上で補足を補っているものがJASE(自動車技術会)のテクニカルペーパー(TP 18004:2018)になります。ここでは、SAEとJASEのそれぞれの規格書をもとに自動運転のレベルの紹介を行います。

自動車技術会(JASE)

https://www.jsae.or.jp

ここでは、自動車の運転をする人については「ドライバー」と呼び、車側のことを「システム」と呼びます。

自動運転のレベルについて

基本的には市販されている車はレベル2までとされていることが多く、一部の条件においてのみレベル3を実現している車(2021/3現在)もあります。
わかりやすくするために、だいぶ簡略化しました。

大きく分けると、レベル0から2が、ドライバーによる運転で、レベル3から5がシステムによる運転となります。

レベル 0 1 2 3 4 5
ドライバーによる運転 ✖︎ ✖︎
システムによる運転 ✖︎ ✖︎

詳しくはあとに述べますが、レベル2における△は、ある条件においてはシステムが運転します。
レベル3における△はシステムによる運転が困難になった時にはドライバーが運転をします。
○がついているところは運転も責任もあります。
✖︎がついているところは、運転も責任もありません。

レベル0 運転自動化なし

警告や瞬間的なサポートにとどまっています。
ドライバーが全ての運転を行います。

レベル0の具体例

・自動緊急ブレーキ(automatic emergency braking)

ディーラーでの試乗時の事故などもあったことから自動ブレーキ自体は有名ですが、何秒後かに衝突が予想される場合に警告を鳴らしたり、その警告が無視されたりした場合などに緊急ブレーキがかかるものになります。最近の車には採用されることが多くなってきました。

高速道路におけるトラックなどの大型車の追突事故は大事故になることが多いです。
そのため、後付けで追突や衝突警告を出せる装置なども市販されています。このシステムにより、88%事故を削減できたという調査もあります。2017年にインテルに買収されたイスラエルのモービルアイという企業の製品があります。
価格は税込176,000円、取付工賃は乗用車で38,500円、中大型車で49,500円です。(2021/3現在)

Mobileye570mobileye570

参考 https://www.imobile.bz/HOME 

自動車の買い替え頻度は下がっていることからもこのような形で事故を軽減する装置が後付けで追加できるようになることはますます進むことが予想されます。
いくら自動運転の車が増えても、自動運転ではない車との混在する時代を経る必要があります。

・死角(見えないところ)エリアにおける警告(blind spot warning)

街を運転していると、サイドミラーに赤いランプや黄色いランプがついている車も見たことがある方も多いのではないでしょうか。
あの赤いランプがついているときは、レーンを変更したら危ないですよ、ということをドライバーに伝えています。
それでもウインカーを出したりすると警告音がなったりしてシステムに怒られたりします。

特に夜の場合はレーンの違う車との距離がわかりづらいこともあります。それを車の後部につけたレーダーで検出して、今はレーンを変更できるのか、それともそうではないかをドライバーに表示するシステムです。

かつて教習所でも習ったことですが、レーン変更の際には必ず首を後ろに向けましょう、というのがありました。
あれは、車のミラーからは見えない死角が存在するからです。

駐車時における、後ろに障害物があると警告音がなるものも用途は違いますがこのレベル0にあたります。

・レーン逸脱時の警告(lane departure warning)

システム側が道路の白線をカメラで検出し、レーンからはずれてしまいそうな時に警告音がなるシステムです。

・ABS(アンチロック・ブレーキシステム)

従来から採用されているABSもある意味、レベル0にあたるといえます。

ABSとは、ブレーキを踏んだときにタイヤがロック(止まる)してしまわないようにシステムが細かくブレーキを踏むシステムのことです。タイヤがロックしてしまうと、車の制御が困難になります。
それを防ぐためにドライバーがタイヤをロックさせるくらい強く踏んだしてもシステム側がその動作を打ち消すものです。

このような形で、通常は動作しないけれども、ある特定の条件下で動作するものなどがレベル0にあたります。

レベル1 運転支援

ステアリング操作、"もしくは"ブレーキ、アクセル操作にてドライバーの支援を行います。
レベル0と異なる点は、警告だけでなく、ある特定の条件において一定時間ドライバーに代わりシステムがある一部分の動作について運転をすることがあることです。すべての責任はドライバーにあります。
"もしくは"と書きましたが、ステアリング操作と、ブレーキ、アクセル操作のどちらか"OR"の支援を行います。

レベル1の具体例

・車線逸脱防止システム(lane centering)

各社名称は多少異なりますが、”レーンキープアシスト”といった名称のものです。
車線を逸脱しそうなときには、警告を出すだけでなく、システムがステアリングを操作して車線の真ん中に移動するように促すものです。

ステアリングのみの操作でアクセルの動作は同時には行わないものになります。

・アダプティブクルーズコントロール(adaptive cruise control)

ここ10年くらいの車でも搭載されていることが多いので運転したことがある方も多いと思います。

設定されたある一定の速度で走行する機能です。その際に前に車が入ってきた場合には、追突しないようにその速度に合わせて減速します。

前の車がいなくなれば再び設定した速度まで加速する機能になります。

上の2つのハンドル操作と、アクセル操作のどちらか一方を行うことができるシステムはレベル1ということになります。
同時に行うことができるシステムはレベル2になります。

レベル2 部分運転自動化

ステアリング操作と、ブレーキ、アクセル操作を"合わせて"ドライバーの支援を行います。
レベル1は、ステアリング操作とブレーキ、アクセル操作の機能を”もしくは”と表現しました。
つまり、”OR”で定義されています。
レベル2は、”合わせて”と表現しましたが、”AND”で定義されるものになりますので、レベル1と異なり、その両方をシステムが担当することがあります。

つまり、レベル1に挙げた、車線逸脱防止システムと、アダプティブクルーズコントロールを同時に行うことができることになります。

一見、自動運転がなされているように見えますが、あくまで運転の一部をシステムが担当しているだけで、運転中にドライバーがハンドルから手を放して休むことや、スマホの操作というようなことはできません。

多くの市販車はこのレベル2までの対応となっています。
責任もドライバーにあります。

テスラは、まるですでに自動運転ができているというような表現をよくされますが、厳密にはレベル2どまりです。ただ、レベル2を世に早く出し、多くのデータを集めていることから各社の先に行っていることは予想されます。

レベル3 条件付運転自動化

運転自体をある条件においてドライバーに代わりシステムが行います。
ただし、システム側が運転の継続が困難となった場合には、一定時間以内にドライバーが適切に操作する必要があります。

ドライバーは一定条件において動作の監視が不要になるため、休んでいてもスマホを操作してもいいということになります。
システムからの警告があればドライバーは一定時間以内に運転を代わる必要があるため、居眠りや飲酒はできません。

レベル3の具体例

・渋滞運転機能(traffic jam chauffeur)

なぜ、レベル3において、この”渋滞運転機能”というものが用意されているかを考えると、おそらく速度域による限定をしたかったからかと思われます。速度が遅くなれば事故が起きた際にも被害は小さくなります。

このレベル3は2021年3月に発売されたホンダのレジェンドに世界で初めて搭載されました。台数も100台、価格も1100万円でのリース販売というところから、あくまでテスト販売と見た方がいいでしょう。ただ、このレベル3を世の中に出した意義は大きいです。
通常のホンダのADASの部分については、”ホンダセンシング”と言われていますが、このレジェンドのADASは、”ホンダセンシングエリート”と命名されています。

ホンダの発表の際になぜ、100台限定なのかについての質疑についても、きちんと整備した状態でサービスを高めた状態で提供したいためという意味のことを言われていました。車は維持する人によってまるで整備や点検なども変わってしまいます。

ホンダでは、この渋滞運転機能については”トラフィックジャムパイロット”と名付けています。
動作は以下のような形になります。

0.高速道路をハンズオフで走行(車線逸脱防止システムとアダプティブクルーズ動作にて Level2)
1.渋滞に遭遇(時速30キロメートル以下になる)
2.渋滞運転機能の動作(停止、発進、ハンドル操作全てをシステムが行う Level3)
3.動作中ドライバーはTVやDVD視聴といったことができる
4a.渋滞が解消される(時速50キロメートル以上になる)
4b.システムがなんらかの理由で対処できない状況になる(天候不順による白線検知不可や指定外道路になるなど)
5a.渋滞運転機能が停止(車線防止システムとアダプティブクルーズ動作にて走行 Level2)
5b.システムがハンドル操作等をドライバーに促す(シートベルトによる振動など)
6b.ドライバーが反応しない時には車を寄せて緊急停止(緊急時停車支援機能)

4aと4bが分岐未来です。
渋滞がなくなればレベル2よる走行に戻りますが、レベル3での走行中にシステム側がなんらかの理由で運転に対処できなくなったときにはドライバーが運転を代わる必要があります。その時に代わることができない場合は、車を左側に寄せて停止します。そして、停止した際には緊急発信でオペレーターに通話までできるようになっているそうです。
6bについては渋滞運転機能とは別になりますが、参考までに載せました。

ホンダ自動運転技術の取り組み

https://www.honda.co.jp/automateddrive/auto/

レベル4 高度運転自動化

運転自体をある条件(地域限定、高速道路限定など)においてシステムが行うが、レベル3と異なり、ドライバーは一切の操作を求められません。つまり、その条件下においては運転席すらなくてもいいことになり、ドライバーは運転から解放された状態になります。
ドライバーがいない、つまり乗客のみでよいことになります。

現時点で各社で実験や発表されている自動運転がこのレベルにあたります。

レベル4の具体例

地域限定無人タクシー(local driverless taxi)

フランスのNAVYAという会社が自動運転レベル4まで対応した小型のバスEVOを日本の半導体メーカー、マクニカを通じて2021年1月に販売を開始しました。マクニカが販売代理店になっていますが、NAVYAにICなどを提供しているのかもしれません。

https://www.macnica.co.jp/business/maas/products/133978/

EVOはレベル4対応、ARMAはレベル3対応になります。
乗客数はどちらも15人で電気自動車になります。
寸法はどちらも全長が4.8m程度のようですので、普通車と同じ寸法です。ただ、高さは2.7m程度ありますのでかなり高いです。乗ったときに狭いとはあまり感じないでしょう。
最高速度は時速25kmとなっていますので公道用というよりも、空港などの特定の施設内を移動するための乗り物とみた方がよさそうです。
そもそも、レベル4を公道で走行させるためには認可をとるのが大変そうです。国内でも群馬県前橋市で1キロメートルだけの実験を行なったりはしているようです。

群馬県前橋市で5G技術を活用した自動運転バスの公道実証を実施(NECのプレス情報)

https://jpn.nec.com/press/202101/20210108_01.html

レベル5 完全運転自動化

条件なしにシステムが運転を行います。レベル4のような条件も必要とされません。すべての道路においてシステムが運転を行うことを意味します。レベル4同様、ドライバーは不要です。

各社目指していることは確実ですが、現時点(2021/3)では例としてあげられるものはないため、紹介できません。

レベル5を実現するためには法整備など多くの部分で改定が必要となります。
技術的には数年程度で実現可能かと思われますが、市販されるようになるにはもう少しかかるのかもしれません。

-自動運転レベル
-, , ,

© 2024 未来RUN Powered by AFFINGER5