事故例

表示(ウインカー)と異なる動作をしたときに起きた事故の回避の検討【事故例5】

実際に起きた交通事故をもとに状況等は仮説をたてながら、事故の原因を考えます。
そして、自動運転やADASが普及することでどのような形で事故を回避することができるのかどうかを検討します。

事故例

追い越し禁止の片側1車線の道路において、大型車である車両Bの前を走る乗用車である車両AがT字路にさしかかりました。
車両Aは一旦、左折と思い左にウインカーを出し、左に寄ったが間違いに気づき、ウインカーを出さずに右折を行いました。
その結果、左折すると思い追い越そうとした車両Bと衝突しました。
5月の午前2時頃で天候は曇りです。交通量は少なめで、制限速度は時速50kmの道路です。

この事故の判例は車両A,車両B共に50%となりました。

事故原因

車両Aがウインカーと逆の動作をしたことが事故の原因です。

車両Aの視点

不慣れな道を走行していました。

同乗者の案内において右折と案内をされていました。
右折と言われたにもかかわらず、ドライバーは右と左を勘違いしており、左にウインカーを出し左折をしようとしてしまい、同乗者に逆だと指摘されて慌てて右にハンドルをきりました。

その結果、車両Bに追突されました。

車両Bの視点

深夜のため本来ならばさらに速度を出すことができる道でしたが車両Aが前方にいたために、時速60kmで走行していました。
車両Aが減速して左ウインカーを出し、左にハンドルを切ったため、そのまま追い越そうとしたところ、車両Aがウインカーも出さずに右折をしたところに追突しました。

ウインカーを仮に右に出していても恐らく避けることはできませんでした。
ようやく追い越せると右に抜けた事故だからです。

ただし、車両Aがウインカーを出し間違えなければ起こらない事故でした。

事故の問題点

深夜の場合、交通量も少なく、事業用の車は特に道に慣れていることもあり、制限速度よりも出すことが多いです。
そのため、昼間と同じ感覚で制限速度+時速10kmで走行している一般車は慣れている車よりも遅い場合があります。

車両Bは車両Aに対し、「早く行け」という感覚があった可能性もあります。(追い越し禁止のため)

初心者と熟練者の運転が異なるように、深夜の一般車と事業用の車とでは慣れの度合いや、平均速度などが異なっています。
昼間であれば、事業用の車も追い越そうとはしなかった可能性があります。

現状での回避方法

車両Aについて

左にウインカーを出して曲がろうとして、間違いを指摘されてすぐに右に曲がるというのは周りの車を考えれば戻してはいけない動作です。
そのまま左に入るか、もしくは入らなくてもそのままウインカーを戻して後ろの車に注意して直進するか減速するかによって、車両Bをやり過ごすことが考えられます。

車両Bについて

左にウインカーを出して減速していた車が急に右にハンドルを切ることは想定できません。しかし、車間を空けておき、車両Aが完全に左に入るか、もしくは右に入るかなどの自車の前からいなくなることを待つべきでした。

自動運転(ADAS)等ができることの考察

この事故を取り上げた理由は、ドライバーが指定していた動作(ウインカーを左に出す)に対し、実際とは異なる動作をしたということがあるからです。
そういった動作は自動運転の時にどういった影響が起こりえるのかについて考えてみます。

車両A側の対応について

原始的な間違いですので、カーナビにもし行先がセットされていたらこのような間違いは起こらなかったものです。
同乗者による言葉のナビのため右、左を間違えました。

自動運転側で検出する方法としては、現在も実装されているレーンチェンジ時の警告メッセージを出すシステムをもう少し拡張することで可能です。
隣の車線に車がいてレーンチェンジが危険な場合には赤くミラーに表示されていたりするものです。
LiDARほどのものを使わなくても、RADARによる検出で対応できます。相対速度と距離がわかれば良いだけです。

今回のようなケースは、事故前の速度が時速60km程度となると、恐らく車間もある程度は空いていたと思われます。
車両Aが減速をして左に曲がろうとしたときに右に切ったら衝突することは予測できていたはずです。

後ろから迫ってくる車両Bを検出しているにも関わらず、車両Aがハンドルを右に切った時点で衝突する警告メッセージを出すことで回避できます。
また、場合によっては、緊急ブレーキ、もしくはハンドルを右に切らせない自動事故回避システムという形も考えられます。

ただ、ハンドルを切らせないとなると、システムがドライバーの上位にくることになりますので、あくまでドライバーが上位ということならば、ハンドルを重くするなど無理矢理ならなんとか切ることができるというような形の方が望ましいかもしれません。

究極的なところでは、事故を起こそうとしても起こすことができないシステムが求められています。

車両B側の対応について

車両B側の問題としては、車両Aを追い越そうとしたことにあります。

道路自体が追い越し禁止なわけですので、その動作を止める装置があれば良いことになります。

ただ、システムとして車両Aが完全にいなくなるまで動作ができないとなると、左に寄せて停車する車だった場合にどのように対応するのかなどが問題になります。
完全に停車したのであれば追い越すことは考えられますが、停車するまで待たなければならないのだとすると、かなりドライバーのストレスをためてしまいます。

事業用の車などはそのような装置であればドライバーはオフにしてしまうでしょう。

まとめ

人が外に示す表示と異なる動作をすることをシステムにどのようにプログラムをするかにより影響が変わります。
ウインカーなどの表示は他の車両への意思表示です。

システムがそのウインカーなどの表示を読み取るようになって動作する場合には、今回と同じような事故は起こりえます。
ある車両がウインカーを出して右折、または左折すると見せているために車道に出たものの、そのまま直進してきたという場合もあります。

そのウインカーという外部への表示を信じることで、移動はスムーズになります。
一切、信じなければ、事故は起こりにくくはなりますが、余分な待機時間が増えることになります。

また、ウインカーはドライバーによって、出すタイミング、また出さない人などもいるでしょう。
そういった多くのクセがあるものですので、自動運転が進んでいく中では、システムを惑わすものでもあります。

原始的ではありますが、車車間通信の一つだからです。

きちんと車車間通信ができるのであれば、将来的にはウインカーは必要がなくなっていきます。
ただ、外にいる歩行者などにも示す表示でもありますので、当面なくなることはないでしょう。

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