現行技術の限界

アダプティブクルーズコントロールの限界

アダプティブクルーズコントロールとよく似た、クルーズコントロール(速度を一定に保つ)と言われる機能はずいぶんと前から搭載されていたように思います。2000年代の車にも一部の高級車には付いていました。

少し検索すると、三菱のディアマンテには1995年に搭載されていたモデルもあったようです。
いくつかのWeb記事で先進的だと書かれています。
一定の速度を保つだけでなくレーダーで前の状況の検出とギアのシフトダウンでの減速までできていたようです。
個人的な話ですが、実家にこの代のディアマンテがありましたが、そういった機能はなかったので、ディーラーオプションですかね。

話を戻しますが、ただ一定速度で走るだけの機能をクルーズコントロール、前車の状況を確認して速度調整までも行うものをアダプティブクルーズコントロールと呼びます。

アダプティブクルーズコントロール(全車速:すべての速度に対応)の新車販売における販売における装着率は、2019年の自動車工業会の資料によると、2017年に15.0%、2020年の同資料によると、2018年に19.2%となっています。

アダプティブクルーズコントロールの限界

 

出典 トヨタプレスリリース アドバンストドライブイメージ画像 https://global.toyota/

動作概要としては、指定した速度を保ちます。上り坂になったらスロットルをさらに開いて速度が減速しないよう保ちます。ただし、前方に車がある時は減速して追従し、その車がいなくなるともとの設定速度まで戻すというものです。

使用するセンサーとしては、現時点ではセンサーの価格を考えるとRADAR(レーダー)が中心になります。RADARは悪天候には強いけれども空間分解能が低いという特徴があります。

センサーが高価になりますが周囲を3次元で捉えることのできるLiDARでも500m程度先まで検出することはできるようですので、高級車であればRADARと併用という形になるでしょう。

アダプティブクルーズコントロールの限界としては次のようなパターンが考えられます。

  • 周辺の車の動作による限界……急な割り込みなど
  • 外部状況による限界……路面凍結や検出できない形状の車種など

それぞれについて書いていきます。

周辺の車の動作による限界

  • 急に自車の前に横入りをしてくる車がいた場合
  • 前の車が急にどいてその場所に低速車や障害物があった場合

周辺の車がどのような動きをするかについては保証がされません。
こちらの車を認識し間違えて急に割り込み、衝突する勢いで入ってくることもあり得ます。

そうした予期しない動きを周辺の車がした場合に自動運転で走行している車はどのような対応をするのか、あらかじめ処理を組み込んでおく必要があります。

例えば必ずブレーキで回避なのか、空間を把握した上でハンドルによる回避なのか。
一部の車ではそれに近い回避処理をする車もあるようです。

状況による限界

  • 路面が凍結していて制動が伸びてしまう場合
  • 検出できない形状の車種の時
  • トラックのすぐ後ろを走る二輪車の検出や、複数台の二輪車への対応
  • 視界が悪いときやカーブなどの見通しが悪い場合

路面が凍結していて制動が伸びてしまう場合

車間を保って走行しますが、それは路面状況が晴天時と想定していることが多いです。そのため、凍結している場合や濡れている路面では車間を取るなどの処理が必要になります。

画像カメラから濡れた路面なのか、雪なのかなどを検出することもできてきてはおります。また、走行しながら動摩擦係数を計算することで瞬間瞬間の路面状況を把握することはできるようになるでしょう。さらには車車間通信ができることで前方を走行する車両からその情報をもらうこともできるようにはなるでしょう。複数の車から集めた動摩擦係数をある区間ごとに集計してより精度の高い数値が出せるようになります。

検出できない形状の車種の時

都心でよく見かけるストリートカート(ゴーカートの速い版)などの検出は難しいことが予想されます。
レーダー断面積が小さく、地面からの高さもかなり低いです。
他にも電動キックボードといったものが走行することが考えられます。

つまり、従来とは異なる形状の車両が増えて来た時正しく検出することが求められます。それらについてはRADARだけでは難しいですのでカメラなどと併用した使用が求められます。

トラックのすぐ後ろを走る二輪車の検出や、複数台の二輪車への対応

200MHz程度の周波数帯域幅しか使用していないRADARの場合は分解能が1m程度しかないため、トラックのすぐ後ろを走る二輪車の区別は難しくなります。また、その場合トラックを検出することはできますが、追従する場合にどの車両に速度を合わせるのかということがあります。
同様に道路の左側を走る二輪車と走行車線の真ん中を走る二輪車がいた場合も対応が難しくなります。

周波数帯域幅が2GHz以上のUWBのRADARであれば10cm程度の分解能にすることができますのでトラックと二輪車の区別はできますが、追従する際の選択が難しいことには変わりません。

LiDARや画像カメラとの組み合わせで、自車が通ることのできる空間を算出した上でどちらに速度を合わせるのかの最適解を見つけることになります。そのため、そういった判断するためのAIが必要になります。

視界が悪いときやカーブなどの見通しが悪い場合

濃霧や降雪、降雨などで視界が悪い場合や、カーブなどで先が見えない場合もあります。RADARにしても、LiDARにしても直進しかしませんので減衰の多い降雨では距離は短くなり、見通せないカーブの先は見えません。

そういった状況に合わせて車間を変更する必要があります。
RADAR自体は悪天候に強かったとしても、視界が悪いのであれば車間はあける方が安全です。そもそも、その状況においては、画像カメラやLiDARにとっても視界が悪いわけです。

ただ、路車間通信ができている場合であれば、他のセンサーによって他車の位置の把握ができることで、見通しの悪い状況だとしても特に車間をあける必要がなくなることが想定されます。

まとめ:起こり得る異常のパターンを集めることで賢くなる

さまざまな状況下において、まだ人が関与しなければならないシーンがあることが想定されます。
人が関与しなくても済むようになるには、気象だけでなく、道路上の障害物をはじめさまざまな異常な状況における対応の学習が必要になります。近年、注目を集めているAIやビッグデータとの組み合わせが最適解を出せるようになるには、まただまだ時間がかかります。

アダプティブクルーズコントロールが賢くなるにつれ、今度は人間が全く周りを見なくなり、いざという時の対応をしなくなるというようなことも起こり得ます。そういった人の過信による事故も実際に起きています。そういった、過渡期を経て普及が進んでいきます。

そもそも、車単体だけで周囲の状況の判断というのは難しいため、路車間通信といった部分も含めて行われることでより精度の高いシステムになっていきます。

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