自動運転のキモになるのが、センサー技術です。
(ここではセンサといわず、センサーで統一します)
センサーと一言で言えるものではありません。
ざっくり言えば、ある状態を検出するための装置です。
雑学ですが、ここでのセンサーは、sensorですが、censorになると検閲官になります。
発音がほぼ同じで意味することは似てますから語源が同じなんでしょうね。
人に例えれば、五感はまさにセンサーでしょう。
目で外を見て、耳で音を聞いて、鼻で匂いをかぎます。
皮膚で感覚を得て、舌で味覚を検出します。
車が自動運転するには、車のロボット化です。
ロボットになるためには当然、各種センサーが必要になります。
外界を把握するために以下の技術があります。
車に用いられる代表的なものをまとめます。
LiDAR(ライダー)やRADAR(レーダー)などのように、レーザーや電波を出してその反射を受信して測定するようなセンサをアクティブなシステムと呼ぶのに対し、カメラのようにシステムから光や電波を出さずに外からの光などを検出するようなものはパッシブなシステムと呼びます。
ジャンル | センサ名 | 特徴 |
カメラ | 1.可視光カメラ | 人の目と同じように外から情報を取り込みデジタル化して処理する。 電波を用いたレーダーに比べると分解能が高いために白線などを検出できる。 欠点としては、人と同様に夜や降雨、霧といった天候等に取得情報が左右される。 デジタルカメラの発展により低価格化も進み、車載センサーになくてはならないものになっている。 |
カメラ | 2.遠赤外光カメラ | 可視光カメラは夜間に弱いが、遠赤外光カメラは熱源での検出ができるために視界の悪い夜間での人や動物の検出が期待される。 |
電波(光) | 3.LiDAR(ライダー) | レーザーを用いて反射光を受信することで三次元情報を得る装置。距離計測機能が主な機能になる。可視光カメラに比べて天候などの影響を受けにくい。 センサ部分が物理的に回転しているものと、電子的にスキャンさせているものがある。現時点では高価になりやすい。 |
電波 | 4.RADAR(レーダー) | 電波を用いて反射波を受信して物体を検出している。周波数が低く、可視光カメラや、LiDARに比べて、遠距離の障害物の検出ができること、天候などの影響を受けにくい点があげられる。周波数は60,76~79GHz帯と24GHz,26GHz帯などが用いられる。 ただし、分解能が低いために、小さな物体の検出が困難。 |
音波 | 5.超音波センサー | 音波を用いたもので、ごく近距離の障害物検知に用いられる。 |
1.可視光カメラ
自動運転にカメラを使用記録がデジタル化(コンピューターに取り込める形)されることでなくてはならないものになりました。
可視光カメラは、人の目と同じで、外から光を受光して認識するシステムです。
可視光と呼ばれる通りで、人が知覚できる情報に近い形になります。
そのため、人向けに作られた標識や信号、白線、人などを認識することができます。
LiDARやRADARなどは、電波や光の反射して返ってくるまでの時間を測定しているだけですので、分解能(細かく見る力)低く判別できないときでも、パターン認識技術の向上と車ごとの深層学習機能などが搭載されることにより判別がより高度にできるようになることが予想されます。
ただ、ここも人と同じですが、大雨や霧や夜間といった視界が悪くなると画像認識能力も落ちます。
それを補うために、天候などに強い電波を用いたLiDARなどとの併用が必要になります。
また、スバルのEyeSightなどに採用されているステレオカメラを用いることで、単眼カメラではできない距離の検出を行うことができるようになります。ただし、左右のカメラの位置の差から距離を測るものですので、近くの距離を測るときの精度は高いですが、距離が遠くなると精度が悪くなる特徴を持っています。
引用 https://www.media.subaru-global.com/en/news/2356
2.遠赤外光カメラ
近赤外線と遠赤外線を用いたものがあります。
赤外線とはその名の通り、赤の外です。
つまり、可視光(人に見える範囲の光)の中で一番波長の長い赤よりも波長の長いところにある光(電磁波)になります。
その赤外線の中でも、赤に近いのが近赤外線、もう少し波長が伸びて遠赤外線ということになります。
カメラを用いたシステムの弱点として夜間などの視界の悪いときがあげられます。
赤外線を用いたものは、それを補うための方法になります。
近赤外線を用いたシステムは、2000年代の車に搭載されていました。
夜間、ヘッドライトの届かないところを照らし、その道路をCCDカメラ(CCDカメラは赤外線領域も受光できる)にて撮影してモニターに映すものです。
遠赤外線を用いた遠赤外光カメラの特徴は、サーマルイメージャともいわれ、物体からの輻射熱を映像化するものです。
視界が悪くなる夜間や、逆光などにおいても、熱を持つ人や動物を検出することができます。
3.LiDAR(ライダー)
LiDAR(ライダー:light detection and ranging 光による検知と測距)は、従来、自動車用途においてはレーザーレーダと呼ばれていました。基本的には光を発して、その返ってくるまでの時間を測ることで距離の測定を行うものですが、多方面に照射することで面で把握できるようにします。
写真を見てもわかりますが、ごく近くは測定できないために、真っ黒になっています。そのためにもごく近くは別のセンサーが必要になってきます。また、光も電波も基本的には直進しかできませんので、その後ろにあるものは影となり把握することができません。
使われる波長は、900nm帯の近赤外線領域と、1550nm帯があります。
1550nm帯はアイセーフ帯とも呼ばれています。これは水の吸収スペクトルでもあるため、人の目への影響が少ないと考えられています。そのため、900nmよりも高出力が許可されます。それにより測定距離を伸ばしたりすることができます。
ただ、900nmに比べるとコストの面でもまだ難しいところがあります。
方法としては、
・シングルビーム走査(一つの発信、受信装置で回転させる)
・マルチビーム走査(複数の発信、受信装置)
があります。
機械スキャン式と呼ばれるものがあります。自動運転の実験などで屋根の上でぐるぐる回っているものを見かけたことはあるかもしれませんが、あれですね。
さすがにあんなものがぐるぐる回っている車には乗りたくないですが、今後小型化、また回転部分をなくした電子スキャンができるようになることを期待したいものです。
スキャン方法は機械スキャン式の他、MEMSスキャン式、電子スキャン式、フラッシュ式などがあります。
4.RADAR
RADAR(レーダー:radio detection and ranging 電波探知測距)はレーダーですね。この中では一番有名なシステムかもしれません。
使う電波は、現在の自動車に用いられているものとしてはマイクロ波(24,26GHz)、ミリ波(60,76〜79GHz)帯になります。
レーダーの周波数帯は異なるものの、飛行機にも使われるくらいのものですので、カメラなどに比べると距離が離れている物体に対しても測定ができます。
特徴を一言で言えば、遠くのものをざっくり捉えるのが得意というところです。
先にあげたカメラやLiDARに比べて天候などの環境に左右されにくいというのも長所の一つです。
ざっくりというのは、分解能が低いということです。
分解能というのは、ものを分離して把握する力です。
またまたざっくり言いますが、目の悪い人がメガネをかけないで外を見たら分解能が低いということになります。
もっとも、目の悪い人の多くが近視ですので、遠くを把握できるRADARとは逆ですね。
LiDAR同様、これもスキャン(走査)させる必要があります。
なぜならば、電波を出して跳ね返ってくるまでの時間で物体の有無や距離を測定するシステムだからです。
飛行場で、高速にぐるぐる回っているものがありますが、あれもレーダーですね。
あのように回転させることで360度を把握するというものです。
機械式走査、ビーム切り替え方式、フェーズドアレイ方式などいくつかありますが、ここでは割愛します。
現在は、近距離用(SRR)、中距離用(MRR)、遠距離用(FRR)をそれぞれに用意しているためにコスト高になっているようです。
ただ、周波数帯によって減衰量(電波が弱くなる量)も異なるでしょうから基本的には複数のせる必要があるのではないかと思います。
おまけですが、電波は周波数が高くなればなるほど、波長が短くなり、直進性が強くなりますので回折(まわりこむこと)しにくくなります。また、減衰しやすくなります。
100GHz帯以上を使うことで分解能は高くなりますが、デメリットも出てきます。
尚、ミリ波RADARの場合、ある程度は反射波を拾うことができるため、カメラで直接人影をとらえることができていない場合でも検出できる場合もあります。
5.超音波センサ
装置によって異なるようですが、40kHzくらいの音の周波数を用いています。
駐車時の1m、2mといったごく近距離における障害物との距離を測定します。
20年前の車にもついている装置ですので特に新しいセンサーでもないです。
電波を用いたRADARでも周波数を変えるなどして実装することはできると思いますが、コストの関係かと思われます。
ごく近距離を安価に測定するには、超音波センサーが適しています。
参考 TDK
まとめ
以上、大きくわけて5つのセンサーについてご説明いたしました。
使う周波数帯によって、それぞれのセンサーには得意不得意があることがわかります。
そのため、複数のセンサーを用いる形になっています。
天候にされにくく、遠くの距離まで測ることのできるRADAR、人の目に近いカメラ、その間にあたるLiDAR、ごく近くを測定する超音波センサーとさまざまな形で車の周りをセンサーで把握しています。
今回ご紹介したセンサーはあくまで、車が外の状況を把握するためのセンサーであり、実際は、車自体の異常を把握するためや、車内の状況を検出するためなど数多くのセンサーが搭載されています。